60代の少女
やがて、押し殺したような小さな笑い声が、元博の鼓膜を叩いた。
あまりに意外な反応に、元博は思わず顔をあげた。
そこにはいつもと同じ、彼女の笑顔があった。
「・・・元博ってば、何謝ってるのか、判らないよ」
今度は元博が目を瞬く羽目になる。
「そういう所、ちょっと四五六さんに似てるよね」と付け加えるいちに、元博は照れ隠しのつもりで頭を掻いた。
「いや・・・なんか謝りたかったから」
「なに?それ」
再び、いちが笑う。
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