60代の少女
突然降って沸いた声は、この図書館の司書のものである。
「なるべく静かにお願いね」
司書―――江梨子の諫言を受けて、2人は少し肩を竦めた。
ボリュームを絞った声で、江梨子が言う。
「でも麟太郎の言うことは、当たってると思うわよ。少しだけど、前の仏頂面に比べたら、大分人間らしくなったと思うわ」
「・・・人間らしくって」
「本と人間と、両方とお付き合いしてると判るのよ。「人間らしく」ってどういうことか」
江梨子は片目を瞑ってみせる。
「前にも言ったけど、論理的な画家なんて、つまらないからね」
「ああ、江梨子さん、上手いこと言う」
「なるべく静かにお願いね」
司書―――江梨子の諫言を受けて、2人は少し肩を竦めた。
ボリュームを絞った声で、江梨子が言う。
「でも麟太郎の言うことは、当たってると思うわよ。少しだけど、前の仏頂面に比べたら、大分人間らしくなったと思うわ」
「・・・人間らしくって」
「本と人間と、両方とお付き合いしてると判るのよ。「人間らしく」ってどういうことか」
江梨子は片目を瞑ってみせる。
「前にも言ったけど、論理的な画家なんて、つまらないからね」
「ああ、江梨子さん、上手いこと言う」