60代の少女
「・・・はぁ?冗談。俺は元博に近くなりたくはねぇ」
「・・・酷い言い草だな」
本を閉じた元博が反論すると、押し殺した3人の笑い声が響いた。
と、そのとき。
ポケットから流れたメロディに、元博の耳が反応した。取り出して開けば、笹本屋の主人から。
「・・・図書館ではマナーモード。最低限のマナーよ?」
「・・・すみません・・・」
少し眉を吊り上げた江梨子に、元博はばつが悪そうに呟いた。
笹本屋から連絡があるのは、大概、注文していた何かが届いたときだった。
しかしなぜかこのときだけは、この電話を取るのが、妙に怖かった。

虫の知らせなんて、ないと思っていたのに。

ボタンを押して、受話器を上げる。
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