60代の少女
「・・・もしもし」
「・・・あ、元博か?俺だ、一二三」
案の定、聞きなれた声が、携帯電話の向こうから聞こえて来る。
心なしか、いつもより元気のない声であることが、ただの勘違いであることを祈りながら。
「・・・はい。あの、何か?」
心臓の音が、いつもより早い。期待していた言葉は「例のもの、届いたからな」だったのに。
絞るような一二三の声で

「・・・親父が―――・・・親父が―――死んだ」

まさか師の訃報を届けられようとは。
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