60代の少女
なぜか怒りがこみ上げてきて、元博はその本を思い切りキャンバスへと叩きつけた。
威勢のいい音を立てて、巨大な張りキャンバスが吹き飛び、それを支えていたイーゼルは土間を擦るように滑っていく。
心に煙が立ち込めたようだった。腹が立って、でも涙が出そうで、どんな風を起こしたら、この煙が晴れるのか、判らなかった。
「・・・馬っ鹿じゃねえか・・・」
涙が出そうなのに、実際には寸でのところで止まっている。
息が出来なくなるような感覚に襲われて、礼服が汚れるのも厭わず、元博は土間にうずくまった。
「―――・・・元博?」
不意に、背後から声をかけられる。
その声を聞いて、元博ははじめて、自分が蔵の扉を開けっ放しにしていたことに気付いた。
威勢のいい音を立てて、巨大な張りキャンバスが吹き飛び、それを支えていたイーゼルは土間を擦るように滑っていく。
心に煙が立ち込めたようだった。腹が立って、でも涙が出そうで、どんな風を起こしたら、この煙が晴れるのか、判らなかった。
「・・・馬っ鹿じゃねえか・・・」
涙が出そうなのに、実際には寸でのところで止まっている。
息が出来なくなるような感覚に襲われて、礼服が汚れるのも厭わず、元博は土間にうずくまった。
「―――・・・元博?」
不意に、背後から声をかけられる。
その声を聞いて、元博ははじめて、自分が蔵の扉を開けっ放しにしていたことに気付いた。