60代の少女
「・・・四五六さんは、田舎の学校でもガキ大将みたいな人だったよ。自分勝手で、横柄で・・・絶対私の次くらいには長生きすると思ってた・・・」
「・・・自分勝手で・・・横柄・・・すぎんだよ・・・あの人・・・」
やっと、声が出るような感覚で、元博は言葉を紡いだ。
「・・・死ぬときまで、自分勝手なんだ・・・」
自分勝手だ。この間までいつもと変わらず葉巻をふかして、こちらに背を向けながら読書に勤しみ、「帰りますよ」と声をかけたときも、いつもと変わらず、振り返りもせずに「またな」と言っていたくせに。
そんな毎日交わす軽い約束さえ、自分勝手な師は、勝手に破ってしまった。
袖に、暖かいものが触れた。見ると、いちが元博の袖を、血が止まりそうなくらいに強く、握り締めていた。
「・・・自分勝手で・・・横柄・・・すぎんだよ・・・あの人・・・」
やっと、声が出るような感覚で、元博は言葉を紡いだ。
「・・・死ぬときまで、自分勝手なんだ・・・」
自分勝手だ。この間までいつもと変わらず葉巻をふかして、こちらに背を向けながら読書に勤しみ、「帰りますよ」と声をかけたときも、いつもと変わらず、振り返りもせずに「またな」と言っていたくせに。
そんな毎日交わす軽い約束さえ、自分勝手な師は、勝手に破ってしまった。
袖に、暖かいものが触れた。見ると、いちが元博の袖を、血が止まりそうなくらいに強く、握り締めていた。