60代の少女

何となく居心地の悪い空気を元博が感じているのを悟ったのか、四五六は無理やり話の話題を変えた。
「･･･ま、俺は今こうやってここにアトリエ構えて、ガキどもを育てていくまでになったからよ」
「へぇ･･･。ここ四五六さんのアトリエなんだ」
「そ。で、コイツが俺の一番弟子」
一番―――ではないのだが、師匠に言わせれば誰でも一番弟子になってしまうので、元博はとりあえず軽く会釈した。
「コイツは臼井―――」
「―――元博、でしょ？知ってます」
四五六の言葉を、いちが笑いながら遮った。
「昼間、大学の図書館で会ったの」
「なんだ？お前ら同じ大学か？」
「はあ･･･まあ。受けてる講義は違いますけど」
そもそも今日、初めて会ったのだ。言わば、顔見知り、程度の関係で。
四五六は手元に持ったままになっていた葉巻に火をつけた。一服と言わんばかりに、それを吸う。