60代の少女
「・・・元博が弁当とは・・・」
「しかもその包み・・・見るからに、女物だし」
「まさか元博に最初に軍配が上がるとはなぁ・・・」
恨みだか羨望だか判らない視線の攻撃が、少々痛い。
元博は戸惑いながら、そっと包みを開いた。
包みの中には、木目が素朴な印象の2段式弁当。
―――と、小さなメッセージカードが入っていた。
目ざとくカードを見つけた麟太郎が、元博がそれを手にするより早く、横からさらっていく。
「・・・昨日はありがとう。こんなものしか用意できないけど、お礼です。今度アトリエに遊びに行くね―――・・・って、なんだよ、この立派な恋人同士のやりとりは!」
口に入れた食事を散らさんばかりの勢いの麟太郎から、元博は冷静にカードを取り上げた。
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