60代の少女
ようやく理解したらしい麟太郎が、ばつの悪そうな表情で頷く。
そこからは、今日の出来事、講義の内容、講師への愚痴、昨日の出来事という、いつもの会話に戻った。
いつもの会話をしながら、いつもと違う味の食事が口内を埋める感覚。
妙な感覚だった。
しかし、嫌な感じはしない。
少し甘い玉子焼きも、見事な千切りキャベツのサラダも、つやのある白い御飯も。
何故かふわふわと踊るような心が、やたら新鮮に感じた。
「弁当っていいかもしれない」と初めて思った。
思い返すと、高校時代の母の手作りの弁当と言ったら、逃げ出したくなるくらいに酷いものだったから。

昼の一時間が、終わる。
< 25 / 113 >

この作品をシェア

pagetop