60代の少女
「まぁ、来たからには茶くらいだしてやれ。俺はこれから個展の打ち合わせに行ってくるからな」
そう言っていちに中に入るよう促した四五六は、アトリエの重い扉を閉めて出て行った。
いちは、暗さをいよいよ鮮明にしたアトリエをきょろきょろと見回している。
「その辺、適当に座ってくれ。コーヒー、入れてくる」
元博は、休憩用のテーブルセットを指差し、隅の簡素な水場でコーヒーを2人分、入れた。
片方をいちに手渡し、彼女の正面の椅子に腰掛ける。
「随分・・・雑多だよね・・・」
「ああ。掃除なんて、正直気休め程度だ。どれを処分していいのかも判らないし」
そう言って、元博は熱めのコーヒーに口をつけた。
< 27 / 113 >

この作品をシェア

pagetop