60代の少女
「この作品、すごく気に入ってね。大分前の作品だから、売れてるか捨ててるか、どっちかだと思ってた」
「師匠は気に入った作品は手放さないし、捨てるなんてことが出来てたら―――多分、今アトリエはこんな状態じゃなくて済んでる」
「あはは。そうかも」
冗談半分にアトリエを見回した元博の目線を、緩んだいちの目が追う。
本当に、もし四五六が自分の作品の始末をきちんとできる画家だったら、この作品の山は綺麗さっぱりなくなっていることだろう。そうだったら、きっと掃除ももっと楽になる。
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