60代の少女
その後も積まれただけだった絵の具を整理し、筆を種類ごとに分け、他の画材も一通り整頓した。本棚にごちゃごちゃに入っていた美術関係の雑誌も、発行順に並べ替え、資料用の本を大きさごとに仕分けしていく。
3時間経つ頃には、四五六のアトリエは見違えるような風景になっていた。
打ち合わせから戻ってきた四五六が、珍しく唖然とした表情をしたのは、言うまでもない。
「―――お帰りなさい」
いちの笑顔が出迎えたことで、全てを察したらしい。「参った」というように、四五六は両手を挙げながら、アトリエへ足を踏み入れた。
「元博。厄介な子を助けちまったな」
「・・・素直に助かったって言って下さいよ。実際、助かったんで」
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