60代の少女
「なんか理由になってないんですけど?」
「・・・って言われても、本当にこれ以外ないから、しょうがない」
「余計に判らなくなくなったよ?」
「・・・悪い。でも・・・これ以外、なんて言っていいか」
「なんで謝るかな?」
静かな空間に2人だけの会話と笑い声が響く。
その空気を、学芸員のわざとらしい咳払いが遮った。
再び、場が沈黙する。
その一瞬の沈黙が妙におかしくて、2人が顔を見合わせた瞬間、2人分の小さな笑い声が、再び空気を揺らした。
その後、一通りの作品群を巡り、再び受付嬢のそっけない挨拶を背に受ける。
美術館を出ると、空から白い粒が散らついていた。
東京にしては、少し早い雪。
2人は並んで、駅の方向へと足を進めた。
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