60代の少女
元博は描きかけだった絵に、再び筆を入れた。
「―――・・・そうですね。何か問題でも?」
このあと、師の「別に」という言葉で、この会話は終わるはずだった。
しかしその期待は裏切られた。
「―――やめとけ」
いつもと変わらぬ四五六の声音。それが妙に重く感じた。
元博は再び、筆を止めた。一瞥した師の背中も、いつもと変わらず、いつもと変わらぬ位置にあった。
「・・・どういう意味ですか?」
プライベートなことには一切干渉してこない師が、元博の感情にケチをつけるなどということは、今までなかった。
それが、今―――。
「彼女を好きになるな、って言ってんだよ」
「・・・何、言ってんですか?」
「―――・・・そうですね。何か問題でも?」
このあと、師の「別に」という言葉で、この会話は終わるはずだった。
しかしその期待は裏切られた。
「―――やめとけ」
いつもと変わらぬ四五六の声音。それが妙に重く感じた。
元博は再び、筆を止めた。一瞥した師の背中も、いつもと変わらず、いつもと変わらぬ位置にあった。
「・・・どういう意味ですか?」
プライベートなことには一切干渉してこない師が、元博の感情にケチをつけるなどということは、今までなかった。
それが、今―――。
「彼女を好きになるな、って言ってんだよ」
「・・・何、言ってんですか?」