60代の少女
元博のその疑問を読み取ったように、読みかけの本を置いた四五六は、立ち上がった。

「・・・彼女は、年を取らないんだ」

その動作が、とても遅く感じられた。
それは、その言葉が冗談ではないと言っているようだった。
「・・・なんですか?それ・・・」
元博には、それしか返せなかった。
意味が―――全く判らない。
笑っているのか、怒っているのか、表現のできない表情の元博にお構いなしに、師の容赦ない一言が襲ってくる。
「・・・そのまんまの意味だ」
「・・・だから、それがどういう意味なんですか?」
「・・・だから、そのまんまの意味だよ」
「だから・・・!」
先に進まない会話に苛立つ。
しかしあまり聞かない師の神妙な声音に、冗談で言っているわけではないことだけは判った。
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