60代の少女
「―――・・・なんで、そんなこと?」
結局、埒の明かない会話に折れたのは元博の方だった。
四五六は椅子を元博の方に向き直し、座った。
「いちちゃんと俺が同郷なのは、聞いたな?」
元博は、黙ったまま頷いた。
「俺が画家を志して、故郷を離れたのが、21のときだった。彼女は俺の1つ年下で、近所だったし、お互い絵が好きだったから、よく一緒に遊んでやったんだよ」
「―――1つ年下?」
元博は耳を疑った。
四五六の1つ年下と言ったら、今年で62になる。
あのせいぜい高校生程度にしか見えない可憐な少女が、今年で62歳?
眉根を寄せる元博を無視して、四五六は続けた。
「まぁ、いつまでも若々しくいたいってのは、女性にとって永遠の夢かもしれないが、彼女のはちょっと度が過ぎるだろ」
「・・・どういうことなんですか?」
「・・・さあな。詳しくは良く知らないが、どうもそういう・・・病気みたいなもんだってのは聞いた」
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