60代の少女
ようやく沈黙が気になりだした頃、いちが口を開いた。
「―――お願いだから・・・嫌いに・・・ならないで・・・」
まるで独り言でも呟くような、やっと聞こえるくらいの小さな声。
それでも、必死の嘆願だと伝わる声音。
混乱して、ざわついていた頭が、一気に晴れていくような感覚を覚えた。
元博は軽く、頭を掻いた。
不老不死の彼女。自分は年を取っても、彼女はこれ以上年を取らない。例え死ぬまで彼女を愛すると誓っても、自分は多分彼女より先に死ぬ。
そうやって彼女は、ずっと時間に残され続けてきた。
多分、お互いのことを考えたら、これ以上踏み込まないのが、最善なのだろう。
お互いを知って、想うほどに、変わるのも、残すのも、残されるのも、辛くなる。
だが―――最善が最高とは限らない。
心は、決まっている。
「―――お願いだから・・・嫌いに・・・ならないで・・・」
まるで独り言でも呟くような、やっと聞こえるくらいの小さな声。
それでも、必死の嘆願だと伝わる声音。
混乱して、ざわついていた頭が、一気に晴れていくような感覚を覚えた。
元博は軽く、頭を掻いた。
不老不死の彼女。自分は年を取っても、彼女はこれ以上年を取らない。例え死ぬまで彼女を愛すると誓っても、自分は多分彼女より先に死ぬ。
そうやって彼女は、ずっと時間に残され続けてきた。
多分、お互いのことを考えたら、これ以上踏み込まないのが、最善なのだろう。
お互いを知って、想うほどに、変わるのも、残すのも、残されるのも、辛くなる。
だが―――最善が最高とは限らない。
心は、決まっている。