60代の少女
■師匠と弟子

残し逝く者

翌日の個展準備には、見慣れた弟子達と師匠、そして彼女の顔。
不足のものがあったので、アトリエでその残作業をしてから来たのだが、四五六にはちゃっかり「遅刻だ」と言われる始末だった。
作業は大分進んでいて、元博のする作業といえば細々としたものしかなかった。
作品は全てキレイに並べられているし、残る作業といえばタイトルパネルを貼り付けるくらいで、地味だが仕上げとして大事な作業に、元博は1人で没頭する羽目になった。
皆はといえば、先ほど揃って食事に出て行ったところである。
静かになったギャラリーで、黙々と作業を進める元博の背を、師の声が押した。
「…皆はどうした?」
「…飯に行きました」
「お前はいいのか?」
「おやつって名目で、奥さんに蒸しパンをたくさん頂きましたので」
四五六の苦笑いが肩越しに聞こえてきた。
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