60代の少女
四五六は葉巻を懐から取り出したが、元博に一瞥されてそれを閉まった。
ギャラリー内、禁煙である。
「…で?お前はどうするんだ?」
「…なんのことですか?」
「…いちちゃんとのことだよ」
手持ち無沙汰になった四五六は、腕を組みながら言う。
元博は閉口した。
どうやら師は、自分と彼女の関係を、あまりよく思っていないらしい。
「…そのことは、昨日も言いました」
「聞いたな」
「じゃあ別にいいじゃないですか」
自分の師は、絵に関して天才的だと思うが、人を苛立たせることに関しても天才的だと思う。
昨日も、いちを家まで送ってアトリエに戻った後、この話になり、言った。
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