60代の少女
「せっかくいいファンに出会えて高揚気分だったってのに、弟子の一言にどん底に落とされたような気分にさせられるとはな」
「また心にもないことを…」
振り返った先にある、師の心の欠片すら感じ取れないような言葉に、元博は嘆息した。
四五六は相変わらず、わざとらしい口ぶりで言う。
「お前は本当に可愛げない弟子だねぇ」
「…別に師匠に可愛い弟子だなんて思われたくありません」
「―――ひでぇと思わねぇか?」
一瞬目を瞬いた四五六は、視線を麟太郎に移した。
「…そうっすね。まぁ、いつもこんな感じですけど」
麟太郎も苦笑いで答える。
四五六は思いついたように膝を叩いた。
「―――よし。なら普段から世話になってるお弟子様に、プレゼントでもしようじゃねぇか」
「プレゼント?」
四五六の言葉を反芻した元博は、無意識に過去の記憶を探り出した。
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