60代の少女
「展示会の後始末はどうするんですか?」
「んなもん全部どこかに適当にぶち込んどいて、年明けてから片付けてもいいじゃねぇか。世間様は年越しっていう、年に一度しかない機会になってんだぞ。この機会を逃したら、年越しイベントを作ってくれた昔の人々に申し訳ないだろうが」
またもや師お得意の正論―――ではなく屁理屈だが―――に、やり込められてしまう。
しかしどうせ年を越すなら、自分の実家に帰りたい。
今年の盆にも帰れなかった。両親にも久しく会っていないし、親不孝はいい加減にしたい年である。
反論しようとした元博は、次に告げられた師の言葉に飲み込まれた。
「もう宿とってあるから、断るならキャンセル料支払えよ」
そう言って上機嫌な背をこちらに向ける四五六に、元博は本日何度目かもわからないため息をついた。
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