60代の少女
師の事である。ろくな噂をされていないに違いない。
「俺は笹本八七。四五六の兄だ。ここで旅館やってる」
八七はそう言って右手を差し出してきた。なるほど、道理で四五六と似ているわけである。結んだ手を握り返してきた無骨さに、力強さを感じた。
元博は借りた客室に泊まることになった。
地元では老舗のようで、古い外観に似合う純和風の中庭に、雪の積もる風景が印象的だった。
これほど落ち着いた雰囲気の旅館が、あの師の実家であるなど、未だに信じ難い。
元博は荷物の整理を終えると、手持ちの荷物だけを持って部屋を出た。せっかく名うての観光地に来たのだから、観光気分を楽しんでもバチは当たらないだろう。
「…なんだ?出かけるのか?」
旅館の扉を開けると、師がタバコを吹かしていた。
「もちっとゆっくりしてたらいいだろうに」
「わざわざここまで来たんですから、じっとしてるわけにはいかないですよ」
「俺は笹本八七。四五六の兄だ。ここで旅館やってる」
八七はそう言って右手を差し出してきた。なるほど、道理で四五六と似ているわけである。結んだ手を握り返してきた無骨さに、力強さを感じた。
元博は借りた客室に泊まることになった。
地元では老舗のようで、古い外観に似合う純和風の中庭に、雪の積もる風景が印象的だった。
これほど落ち着いた雰囲気の旅館が、あの師の実家であるなど、未だに信じ難い。
元博は荷物の整理を終えると、手持ちの荷物だけを持って部屋を出た。せっかく名うての観光地に来たのだから、観光気分を楽しんでもバチは当たらないだろう。
「…なんだ?出かけるのか?」
旅館の扉を開けると、師がタバコを吹かしていた。
「もちっとゆっくりしてたらいいだろうに」
「わざわざここまで来たんですから、じっとしてるわけにはいかないですよ」