60代の少女
その絵を眺めながら、元博はしばらくその場に突っ立っていた。
四五六に何度、いちとの付き合いを反対されただろうか。
時間の壁、というものを突きつけられて、どれだけ心は迷わされただろうか。
なのに、師の絵の中の自分たちは、こんなにも穏やかに笑っている。
「―――・・・人の絵を覗くなんて、お前らしくねぇじゃねえか」
不意に、四五六の声が空気を揺らした。
顔を上げると、いつの間に戻ってきたのか、四五六は元博のすぐ傍に立っていった。
「・・・師匠・・・」
「・・・あんまり見んなよ。恥ずかしいから」
そう言う師は、珍しく言葉通り恥ずかしがっているようで。
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