1ページの恋模様
今日こそは…
壁を隔てた隣のクラス、6組。
何でわたしは5組なんだろう…。
だけど、今日こそはっ…。
わたしの好きな人、6組の彼。
特別目立つわけではない彼とは。
唯一、体育と選択教科の美術でしか交われない。
好きになったキッカケは…。
3ヶ月前、体育の授業のとき。
『うわっ、最悪っ』
大きな声が体育館に響き、続いて張り上げられた言葉。
『誰かーっ!!ティッシュ持ってないーっ!?』
その場にいた生徒全員の視線が声のする方に集中した。
『体育なのに持ってるわけないじゃん』
6組の女の子の罵声。
思わず、ジャージのポケットに手を当てる。
カサッという音に手の突っ込むと出て来た、いつのかわからない外装が皺だらけのポケットティッシュ。
…あったにはあったけど。
手にしたまま、立ち尽くす私に。
『あんた持ってるじゃん?』
と、隣にいた友達が指差したかと思ったら。
『こっちーっ!!この子持ってるよーっ!!』
わたしの腕を掴み叫び声を上げた。
『ちょ、ちょっとっ。やめてよ…』
そう言った時には遅くて、困惑したわたしの前に駆け寄った男の子。
『いや、ありがとっ。鼻水が止まらなくてさ』
はにかんだような笑顔に、ドキッとわたしの胸が騒ぎ出す。
マジありがとね。と、わたしの手からポケットティッシュを奪うと、とびきりの笑顔を残し走って6組の輪の中へと消えて行った。
それから、彼の姿を見つける度にドキドキが鳴り止まない。
次の授業は1週間待ち侘びた大好きな美術。
今日こそは、話しかけるっ!!
そう意気込んで教室を背にした。
【END】