liarain
嘘つきな僕に雨
天気は最悪。
途中で買った傘なんて役に立たない。
風もないのに斜めに降り注ぐ小雨が、さらさら顔に当たる。
それでも、一分一秒でも早くそこに着きたかった。
もしこの雨が彼女の心を反映しているのだとしたら……。
また、僕はきっと、嘘つきになる。
僕は無言で、傘を差し出した。
「大丈夫」
大丈夫じゃないくせに。
小刻みにカタカタ震えてるくせに、そんな強がりを言う。
たぶん、その震えは寒さのせいだけじゃないことだって、僕にはお見通しだ。
「とりあえず、受け取ってよ」
そこら辺のコンビニで買ったビニール傘を、僕は立ったまま、座り込んでいる彼女に突き付けた。
それでも彼女は首を横に振るだけで、一向に傘を受け取る素振りを見せない。