liarain
僕は、彼女の薬指になりたい。

左手の薬指になりたい。

そしたら絶対そんな金属はめさせない。

彼女を約束で縛るだけの、そんなモノ絶対に……。

例え、彼女の耳が永遠を誓うなんて嘘を聴いても。

例え、彼女の唇に嘘だらけのキスが落とされても。

そいつだけは絶対に避けてやるのに。





「ありがとう、元気になった」

そう言って微笑んで、彼女はゆっくりと立ち上がった。

僕もつられて立ち上がる。

「送ってく?」

「ううん、大丈夫」

彼女は「本当にありがとう」ともう一度お礼を告げると、手を振って、歩き出した。

僕も逆の方向に歩き出して、ふと振り返ると、まだ遠くない彼女の背中が見えた。
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