パセリな彼女がついた嘘
きょろきょろと辺りを見渡していた僕の視界の先、
ロータリーを挟んで真向かいのビルとビルの間から、
男女が二人並んで歩いて来た。

それはデジャブのようだったけれど、
あの時とは違って辺りは明るく、雨も降っていない。

ただ、同じ男女がそこにいて、僕の心臓は早くなった。

思わず目を逸らして、すぐ近くの喫茶店に入ると、
「いらっしゃいませー」と言う中年の女性と目が合い、
僕は瞬きを多めに右の人差し指を立てて、人数を伝えた。

席に着く。

メニューもろくに見ずに、
水を持ってきた女性に「日替わりとアイスコーヒー」
と八つ当たりぎみに告げ、ケータイを取り出した。
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