パセリな彼女がついた嘘
「ユミちゃん、哲学者みたいだ」

少しの、沈黙があった。

『トヨエツは、いい男だから、もっといい男になってね』

「ありがとう」

『私、年末にはこの番号も解約するから、
それまでに一度、なんかトヨエツと、話したかったの』

これが例え気まぐれであっても、
彼女が僕の知らない世界で経験した、
悲しみや苦しみから学んだことを、
僕が悩める夜に諭してくれたことに敬意を表して。

僕は目を瞑り、もう一度「ありがとう」と言って電話を切った。
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