パセリな彼女がついた嘘
その客と目が合ったとき、僕の酔いは吹き飛び、
心臓が先ほどまでとは違う理由で早く動いた。

「こんばんわ」

瑠璃子さんは、表情を変えずにそう言った。
思わず視線を落とした僕の視界に、ラピスラズリが入る。

「今日、休みなんだ?バイト」

僕が精一杯の平常心を装って言うと、

「うん、休みの日くらい、違う店にって思ったの」

語尾を小さくそう言うと彼女は会釈して、
僕たちを通り越した。

その晩、亜里沙が眠った後も僕は一晩中、
ソファーでケータイを眺めていたけれど、
着信やメールで、それが震える事はなかった。
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