パセリな彼女がついた嘘
「母が亡くなってから、
実家の仕事を一時期やめてたんだけど、
父が来年から再開するって言うから、手伝おうと思って」

そう言った彼女はマグカップを掴む指にはめられた、
ラピスラズリを見つめる。

僕はコーヒーが出す湯気越しに、彼女を見つめる。

「これ、母からもらった、誕生日プレゼントなの」

僕の彼女に対する疑惑は、一気に晴れた。

「それに、兄の結婚が決まって、父ひとりになるから」

僕の周りは、どうやら結婚ラッシュのようだ。

「実家って遠いの?」

僕は再びスプーンを持つ手を動かして聞いた。

「うん、だからコンビニのバイトも辞めるの」

そして元からあまりなかった食欲が、皆無になる、
彼女は続けて言った。
< 144 / 166 >

この作品をシェア

pagetop