パセリな彼女がついた嘘
翌朝、僕は雪乃のキスで起こされて、
そのとき彼女の身支度は既に完璧だった。

くしゃくしゃな自分のまま彼女を送り出し、
シャワーを浴びて、朝食を食べに下へ降りた。

ビュッフェ形式のレストランは、
自由に席を選ぶことができた。

僕は窓際の席を選び、部屋から持ってきた、
地元の新聞をテーブルに置いて席に着いた。

店員がやってきて、

「ビュッフェでよろしいですか?」と言われたので、

「いや、オムレツと、ホットコーヒーをください」と答えた。

するとソースが5種類ほどあると言われた。

マヨネーズをベースにしたもの、
ケチャップをベースにしたもの、
サルサ風味の辛いもの、
ゴーヤを使った和風ソースと、
デミグラスソースがある、と説明を受けた。

あの店の2種類のソースですら迷う雪乃が、
この選択に困ることなど、容易に想像がついた。

僕は微笑んでしまい、
店員には不思議な顔をされたが、
ケチャップソースを選び、
自分の無難さに、ため息をついた。

窓の外を見つめ、

「何の変哲も無いしがない普通のサラリーマン」

と小さく呟いた。

あれ以来、なんだか僕にとってこの言葉が、
自虐をさそいつつ、元気をくれる呪文になっていた。
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