パセリな彼女がついた嘘
雪乃が言っていた通り、12月の人少ないビーチで、
僕は須藤に無理やり貸された一眼レフカメラを持ち、
散策していた。

『男の一人旅にはカメラだろ、絵になる、持ってけって』

そう、彼は豪語していた。

使い方もろくに分からない僕は、子供の頃、
バッティングセンターで父親の姿を真似たように、
テレビや映画で見るカメラマンを想像してシャッターを切った。

ポケットのケータイが震える、雪乃からだった。

『ねーねー分かったの!』彼女の声は弾む。

「何が?」

『あの店の名前!どうしても気になったから、
いま休憩中にPC使って調べに調べたの、
そしたら地元のグルメサイトに口コミが載ってて』

「ああ、」と僕の返事にかぶせて、
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