パセリな彼女がついた嘘
なるほど。

と、先ほどの須藤の発言の意味が分かるまでに
そう時間はかからなかった。

美人揃いの3人組、歳こそ同じで24だけれど、
短大卒社会人4年目の彼女たちには、
落ち着いて大人びた印象を受けた。

そのオフィスに馴染む上品且つ華やかなファッションで
アイデンティティを確立させていながら、
惜しみなく笑い、惜しみなく食べ、押しみなく飲んだ。

とは言え婚期を逃すまいとする
【狩猟民族】の匂いはしなかった。

その余裕に僕は、

「みんな彼氏いないの?」と思わず聞いた。

すると須藤が笑いながら何か言いかけ、
それより先に僕の正面に座る髪の長い子が、

「みんないます」と言って、
細いグラスを持ち上げ、口元でそれ傾けた。

そのカクテルを飲む彼女を見ていたら、
僕の中の、僕であって僕でない僕が、
明かに僕を支配してくるのが分かった。

一人称が自分の名前である黒髪の子が僕に、

「自分は彼女いるの?」と聞いた。

僕は間を置くことなく、

「いないよ」と声に出して、心の中で、
「東京には」と付け足した。
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