パセリな彼女がついた嘘
彼女は笑みを堪えるように口元にキュっと力を入れ、
軽く会釈をしながら自動ドアの前に立った。

ドアが開くと同時に、

「これ」と僕に見せられた彼女の手のひらにあるリングは、
今しがた僕が店員に渡したものだった。

それは店の外、蛍光灯のない光の下では、
また違った輝きを見せて妖しく光っていた。

「洗面所に、あったんだ」

「はい、聞きました。本当に良かったです、
トイレ清掃のときにはずして、うっかり、」

「ここで見ると飛行石みたいだね」

彼女はそのリングを右手の薬指にはめると、

「え?」と、その手で口元を覆い、軽く笑いながら言った。

「さっき明るいところで見たときは、
地球儀みたいな色してた」

彼女はリングをはめた手を自分のほうに傾けてみた後、
僕を見て、

「この石、ラピスラズリって言います、きれいでしょう」

と言った。
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