パセリな彼女がついた嘘
駅まで迎えにいこうと思っていたのに、
雪乃が鳴らすインターホンで目が覚めた。

彼女は大きなビニール袋を一つ提げ、
僕がドアを開けるともう片方の手で地面に置いた
12ロール入りのトイレットペーパーを持ち上げた。

「どうせ寝てると思ったから実家に寄ってきたの、
もう夕方ですよ?」

「でもまだ外は明るいから、大丈夫」

そう言って彼女から荷物を受け取り、
足元に視線を落としてハイヒールを脱ぐ姿を見ていた。

見たことのない黒い先の尖ったパンプスから、
濃い目のパープルに塗られた爪が見えた。

僕は一旦荷物を床に置いて、
彼女の両足が完全に僕の部屋に着地するのを待ってから、
勢いをつけないように気を使って彼女を抱きしめた。

「ちょっと、苦しい」

「いい匂いがする」

「まだ外は明るいんだから」

そう言われて少し前の自分に舌打ちをして、体を離した。
< 36 / 166 >

この作品をシェア

pagetop