パセリな彼女がついた嘘
「家はここから近いの?」

僕と同じ方角に歩き出した彼女に質問すると、
彼女は答えないまま、

「いつにします?あれ」

と言って、右手を挙げて月を指差した。

僕は発言の意図を理解できず、
月に照らされた瑠璃色のリングを見ながら、
少しの間、思考を巡らす。

「自分の言ったことを、あんまり
覚えてないタイプなんですね」

そう言った彼女の言葉に僕はひらめき、

「今日はずっと敬語なんだね」と言った。

彼女は右手を下ろして僕を横目で見てからため息をつき、
肩に掛けたバッグを深く掛けなおした。

それにしても月を見てオムライスを連想する彼女に驚いた。


僕はこの先の人生で、丸々と太った上弦の月を見る度に
彼女を思いだすことになるのだろうと悟った。
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