パセリな彼女がついた嘘
ふと彼女の右手にラピスラズリがいないことに気がついて、
そのことについて尋ねると、

彼女は火をつけたタバコを吸い込んで、
ゆっくりと横に吐きだしてから、

「いつもしているわけじゃないの」と言った。

そして続けて彼女は、

「ここのカフェにはよく来るの?」

と言ってからすぐにタバコを消した。

「実は僕も、あまりここにはいい思い出がなくて」

僕がコーヒーを無意味にスプーンでかき混ぜながら言うと、

「でも、お互い上書きができたね」

と言って彼女はポットを傾けてハーブティを注ぎ足した。

レモングラスとダンデライオンの香りが、
苦いコーヒーの香りを消していくような気がした。
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