パセリな彼女がついた嘘
「おつかれ」

ケータイを耳にあててそう言い、
カバンからペットボトルを探した。

『お疲れさま、家?』

当たり前ながら聞きなれた声に、
彼女であることを再認識する。

「そう、いま着いた、雪乃は?」

『私は、もう寝るとこ』

「そっか、あ、ちょっと待って」

うん、と彼女が言ったのを聞きながらケータイを膝に置いて、
両手でペットボトルのフタを開け、一口水を飲んだ。

「ごめんごめん」

『うん、てかなんか、疲れてる?』

確かに残業帰りだったけれど、
疲れを声に出したつもりは無かった僕は、

「いや、そんなことないけど」と答えた。

『けど?』

彼女にそう続けられて、僕の悪い癖が出る。

「けど、────
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