パセリな彼女がついた嘘
戒めの不在着信
『あ、悦司さ、あの子とヤった?』

帰宅後すぐに届いた『来週の金曜、暇?』という須藤のメールに、
『予定は未定』と返して数分後、ケータイが震えた。

そしてそれはメールではなく着信で、
須藤は『空けておいてよ』と言ってから、
直後に話題を変えてそう言った。

「僕は誰ともヤってないけど?」

『あ、ならいいんだ』

タバコに火をつけて一口目を大きく吸い込んで言った。

「誰のこと?」

『こないだのコンパの、あの気の強そうな』

そこまで聞いて亜里沙だと分かった。

「どうして?」

『いや世間って狭いな、
 また話すよ、と言うことで来週よろしく』

予想に反して早く終えた電話に気が抜け、
まだ長いタバコを灰皿に押し付けて消し、
ベッドに横になった。

起き上がるのが億劫になった僕はDVDを見ることを諦め、
カーテンを捲って外を見た。

しとしとと静かに雨が降り出していて、
その音を子守唄のようにしていつの間にか眠りについた。
< 61 / 166 >

この作品をシェア

pagetop