パセリな彼女がついた嘘
翌日会議資料をまとめながら、
エクセルでファイルを更新するたびに、
彼女の事を思い出した。

煩わしさに似たその雑念も、開き直ってみると、
意外にも心地がいいものだった。

僕は夕方喫煙所で彼女にメールを打った。

『今度とお化けはいつ出ますか?』

それから就業時まで、いつになく後輩に冗談を言ったり、
打ち合わせでの表情にも笑顔が多い事は自分でも気付いていた。

帰り際、エレベーターの前で総務の女の子が、
遠慮がちに僕を見上げて声を掛けてきた。

「何かいいことあったんですか?」

彼女は鞄を持っていて、まさに今帰りらしかった。

「分かる?」

彼女は口元を抑えて笑い、

「分かりますよ」と言って、
扉の開いたエレベータを左手で押さえ、
僕に先を譲った。
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