パセリな彼女がついた嘘
乱層雲の広がる夜空を見上げながらケータイを耳に当てると、
『出るの早いのね』と言う彼女の声がした。
「キミからの連絡を待ち詫びてケータイを気にしていたからね」
昼間よりも湿った空気を肺に含んで言った。
すると彼女は、
『そんなにつまらない男に手料理を作ったの?私』
と意地悪そうに尋ねた。
【やれやれ】
そんな小説の主人公のような感嘆詞が心に浮かんだ。
僕は含み笑いをしながら、
「オムライス、作ったの?」と尋ねた。
『うん、今晩はうちで、お月見ね、天気悪いし』
その言葉を聞いて、点滅する信号に走った。
「月を食べちゃうの?」
『大丈夫、我が家の月は量産型だから。それより──
僕はケータイを耳に挟み、
鞄から定期を取り出しながら聞いていた。
──これから洗濯物を取り込まなくちゃいけないから、
終わったら、傘を持って駅まで行くね。
きっと、もう降って来ると思うから』
分かった、と言って通話を終えた自分の足取りからして、
彼女よりも随分早くに僕は駅に辿りつくのだろうと予測した。
『出るの早いのね』と言う彼女の声がした。
「キミからの連絡を待ち詫びてケータイを気にしていたからね」
昼間よりも湿った空気を肺に含んで言った。
すると彼女は、
『そんなにつまらない男に手料理を作ったの?私』
と意地悪そうに尋ねた。
【やれやれ】
そんな小説の主人公のような感嘆詞が心に浮かんだ。
僕は含み笑いをしながら、
「オムライス、作ったの?」と尋ねた。
『うん、今晩はうちで、お月見ね、天気悪いし』
その言葉を聞いて、点滅する信号に走った。
「月を食べちゃうの?」
『大丈夫、我が家の月は量産型だから。それより──
僕はケータイを耳に挟み、
鞄から定期を取り出しながら聞いていた。
──これから洗濯物を取り込まなくちゃいけないから、
終わったら、傘を持って駅まで行くね。
きっと、もう降って来ると思うから』
分かった、と言って通話を終えた自分の足取りからして、
彼女よりも随分早くに僕は駅に辿りつくのだろうと予測した。