パセリな彼女がついた嘘
体の距離は心の距離ですか
帰り道、瑠璃子さんに借りたビニール傘を差しながら、

すぐに雪乃に折り返しの電話を入れると、1コールで繋がった。

『もしもし、ごめん仕事中だった?』

第一声、謝る彼女に、
折り返しを急かしたことへのお詫びを感じられる。

「今、帰りだよ、どうしたの」

嘘は、ついていない、と自分に言い聞かせる。

『台風が近づいてるでしょ、仕事は早くに終わったんだけど、
お客様のクレーム対応に疲れちゃって』

心が、痛んだ。

そして思わず立ち止まる。

被害者に邦人はいませんでした、と言うニュース、
旅行先の台風だけを気するような対岸の火事思考、
そういうものを、雪乃はとても嫌った。

だけど、僕は彼女が住む土地の天気すら、把握していなかった。
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