パセリな彼女がついた嘘
「ありがとう、気をつけて帰ってね」

僕の言葉に優しく微笑み、左手を振った。

その指には、ラピスラズリがいた。

昨日の彼女はそれをはめていただろうか。

僕はその曖昧な記憶を辿りながら、
気だるい体を引きずるようにして帰った。

いつもより数倍重く感じる扉を開け、
着替えると、食欲の全く無い僕は、
ヨーグルトを半分も食べずにベッドに転がり、雪乃に発信する。

呼び出し音を4つ数えたところで、
『はい』と懐かしくさえ感じる彼女の声がした。
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