パセリな彼女がついた嘘
「ありがとう、雪乃の声が聞けたら安心だから」

これは本心だ。

『でも、誰か近くにいるなら、看病でもしてもらってね』

何かを見透かされたような気がして言葉に詰まる。

『風邪でのたれ死ぬなんて、あなたの美学に反するでしょ』

「はは、そうだね、
一番料理がうまそうな女の子に電話して何か作ってもらうよ」

『そうだね、風邪なら悪さできないだろうし』

相変らずの僕たちの会話だ。

けれど僕は電話を切ってから寝付くまでの間、
昨夜の不安定な雪乃の気持ちを思っていた。

雪乃の強くも脆い部分を知っている僕は、

彼女が寂しさに人を請うとき、
寒さに震えるときに、

同じ事を彼女に言えるだろうか。

【誰か、彼女を傍で暖めてやって欲しい】


そう、素直に願えるだろうか。
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