パセリな彼女がついた嘘
「ねー、苗字なんて言うの?」

「豊田だよ」

そう言って彼女の手を握り、歩き出す。

「好きな四字熟語って、何?」

僕は関連性を見出せないまま、酔った勢いで、

「一期一会?」と言ってみた。

彼女が静かに笑うので、僕が同じ質問をすると彼女は、

「豊田悦司」と呟いてから、

「なんて、クサい?てか、略して、トヨエツだね」

と言って繋いだ手を前後に大きく振った。


アルコールは言葉に色を塗る。

溶けたチョコレートにフルーツを潜らせるような感覚で、
僕と彼女は、そのままラブホテルに向かった。

20歳の、冬だった。
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