ギア・ドール
思わず、顔が怪訝にしかめる。
何の話をしているのだろうか・・・?
とりあえず、自分はそんな名前の人間を知らない。
そう女性に告げようとして・・・。
「ずっと・・・会いたかったよ・・・二年間・・・何していたんだよ・・・?」
一粒の涙を瞳から落とし、女性は再び気を失ってしまった。
しかし、その言葉に海人の動きが止まる。
二年間。
ちょうど海人が記憶をなくした時間。
もしかして、この女性は・・・・。
「海人?大丈夫?」
思案に暮れる時間は、菫の言葉と共に終わりを告げる。
「ああ・・・大丈夫や。」
とりあえず海人は女性を抱えると、シートから持ち上げる。
軽い・・・・。
女性を上手に肩に担ぐと、コックピットのエンジンを切る。
同時に画面が真っ暗になり、鳴り響いていたブザーも鳴り止む。
やっぱり、どこにも異常らしきものは見当たらない。
それが逆に、不信感をあおり、不気味に感じてしまう。
やはり持っていくのは遠慮した方がいいだろう・・・。