ギア・ドール

 朧新月210年7月31日。


 事件が新たな装いを見せたのは、次の日の午前2時。


 白い機体・・・弁財天がスラムに現れたのだ。


 いったい・・・何のために・・・。


 考える余裕なんて、どこにもなかった。


 たった一夜で、もっとも紫卯基地に近かったスラムの北西部が火の海に化けた。


 消火活動、救出活動・・・全てが遅れた。


 誰もが、弁財天を破壊するのが最優先事項だと考えたからだ。


 だが・・・・・・・・・・・。

< 156 / 232 >

この作品をシェア

pagetop