ギア・ドール
 ギア・ドールの技術は、パイロットの安全性を無視すればもっともっと引きあがる。とは昔から良く言われていたことだ。


 おそらく、弁財天はそれらをすべてつぎ込んだ試作型だったのだろう。


 それが自滅の道を歩むコトになるとは分からずに・・・。


「・・・・・・・・・・・なら、爺さんは、あの化け物が動きを止めるまで放っておけと?」


「だから、俺はこうして地下にもぐって酒を煽っている。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


 海人は、しばらく黙って考え込む。


 脳裏によぎるのは、三日前の出来事。


 菫が無残に散った、あの日・・・・・。


 もう、スラムの中でも20人以上の人間が、あの機体から命を奪われた。


 自分たちが何もしなければ、あいつの動きが止まるまで、そんなことが繰り返されるということ・・・・・・・。


「悪夢やな・・・。」


 結論だった。


「何を今さら・・・・・・。人の人生の先にそれ以外の何が残っているっていうんだよ?」


「パンドラの箱には希望が残っていたらしいで・・・。」


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