ギア・ドール

 もっとも有名なギリシャ神話の一説。


 悪夢と恐怖が詰まったパンドラの箱。


 最後に残ったのは、希望だったという心あたたまる話・・・。


「くだらねぇな・・・。そんなもの大昔に捨て去っちまったよ。」


 人生は常に裏切りと絶望の繰り返し。


 特に、ジン爺さんの年齢ともなれば、それだけ歩んできた道は酷いものだったのだろう。


 今更、希望なんて・・・下らないか・・・・・。


「さいか・・・。」


 それについて、反論する気はない。


 海人は短く返事を返すと静かに席を立つ。


「行くのか?」


「まあな・・・。」


「なぁ、海人・・・俺はお前がここに残っていても、何も言わないぞ・・・。」


 ジン爺さんの口から漏れる意外な言葉。


 弁財天は放っておいても、壊れる機体。


 ここに残って、あいつが壊れるのをじっと待っていろと言いたいのだろう・・・。


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