ギア・ドール
第五章

「おかえり。」


 その日の夜。


 ようやく、家に戻るとアルクがリビングで新聞を広げて待っていた。


「キラは?」


「台所で、夕飯作ってるよ。」


 言われてリビングとつながっている台所に目線を移す。


 そこにはキッチンで何かを切っているキラの姿を見ることが出来た。


「あ、おかえり海人。今日の夕飯はシチューにする予定だけど、食べられないものとかある?」


 キッチンに身体を向けたまま顔だけを海人に向けるキラ。


 まだ身体に巻かれている包帯も取れていないのに、よくそこまで動けるものだと思う。


 ・・・というより、シチューの材料を買えるだけの金は、どこから出てきたんだ?


「いや、夕飯は食べてきた・・・。」


 もちろんウソ。


 ただ、そんなものを食べている余裕がないだけだ。


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